コンセプト

コメントいただいた先生

写真:小林敏孝 教授

小林敏孝 教授
足利工業大学(現足利大学)元睡眠科学センター長

寝返りを自然に打てる機能が最も重要

寝具業界では、当時から万人に合う枕はないということを常識のように思われていますが、私はそうは思っていませんでした。

枕の悩みをお持ちの方の90%以上の人たちに満足いただける枕を作ることは可能であると考えておりました。
それが開発のテーマである「誰でも自然に寝返りを打てるまくら」です。
なぜかというと、睡眠研究の第一人者である小林教授の言葉を耳にしたからです。

睡眠中の寝返りは、昼間虐げられた身体の骨組みやそれらを取りまく筋肉を緩め元の正しい形に戻そうとする、すべての人がもつ自然矯正作用と言われております。
いつでもどこでもよく寝られる人にとって枕はそれほど大きな問題にはなりません。
しかし、「ストレスを抱え、よく眠れない人にとって枕の機能は大きな関心事であるはずです。」
寝付きが悪い、夜中に目覚めてしまい再入眠する時の枕が果たす心理的な役割はとても大切です。

友人からの示唆で再開した枕の開発

メモの写真

『ねるぐ開発ストーリー』でも伝えたが、友人からの示唆を機に、枕への開発意欲が大きく膨らみ始めました。
当時から、枕創りで一番重要なコンセプトは、間違いなく「寝返りをスムーズにする枕」であることは確信していました。
「寝返りをスムーズにする枕」こそ、さまざまな寝姿勢を支えられる機能を備えていなければならないことになるのです。
そこが開発のテーマであったことは言うまでもありませんでした。

今や睡眠中の寝返りは重要な役割を果たしていることは多くの学者や医者によって実証されております。
従って、寝返りをスムーズにする枕こそ、様々な睡眠姿勢を支えられる機能を備えていなければならないことになります。
学説もなければ、情報もない当初では、このテーマ自体が非常に大きな壁でした。

寝返りがスムーズにでき、正しい寝姿勢を確保できる枕が『理想の枕』と言えます。

オーダー枕の主流となった、中素材を分割する枕を参考に

従来の枕は垂直仕切りでスムーズに寝返りがうてない

1990年代前半ごろまでは布地を袋縫いして中にワタやそば殻を入れた単純なものが殆どだったのを記憶しています。
その中でも高級とされる枕の主流は、いくつかの中袋が枕ケース内の決められた位置に入れる分割タイプでした。

これは中袋を取り出し、自在に高さを調整することができるため、寝返りにおける寝姿勢を支えるための物になっています。
枕で悩んでいる人にはありがたい構造になっているのです。

更に進化した枕がケースの中に垂直の仕切りを施したものでした。
仕切りがある事で分割された中袋が枕本体の中で動かないようにするものです。しかも、雑に取り扱っても中の袋の位置は変わりません。私も最初はこの垂直の仕切りを見て、とても感心し、素晴らしいアイディアだと思っていました。
もちろん私も試しました。
しかし、なにかが引っかかっていたのです。

今思えば、当時は必死でした。

『この枕を参考にして、もっともっと良い枕を作ることは出来ないのだろうか』
枕の開発を受けた以上はいい加減な開発はしたくない。
でも情報すらない。
アイディアもこれといったものは出てこず、枕の開発は難航を極めました。

ふと見た屋根の作りが発想のキッカケに

時間が経過する中で、デパートへ行っては枕をかき集め、ひとつひとつじっくりと使ってみる。
とにかく情報を集める必要がありました。
気づいた時には部屋中いろんな枕でいっぱいに。
開発をはじめて以降、常に枕の事ばかり考える。そんな生活を続けていた頃です。
焦りの色が出てきた2004年の1月頃ひょんな事がキッカケでした。

屋根の写真

一度やめたタバコをまた始めたことがその引き金になったのです。ある日、テラスにてタバコを吸っていながらなんとなく隣の数寄屋造り(すきやづくり)の屋根を見ていたときです。

「・・・これだ!!」

急に天からアイディアが降ってきたのです。

斜め仕切り構造という新しい形

今まで引っかかっていたものがすべて解決した瞬間でありました。

従来の仕切り枕は縦方向の仕切りで区切られています。
この縦方向の仕切りでは中央部分と左右部分の中袋同士の高低差によって段差が生じてしまっていたのです。(イラストも含め解説)

枕に頭を乗せたとき仰向きでも横向きでも自分にとって心地よい寝姿勢になり、
頭部の安定だけでなく、体全体で感じられる安心感は大切です。

ねるぐの表面を滑らかにする仕組み(日米特許取得)

この点を解決したのが、数寄屋造り(すきやづくり)の屋根をイメージしてできた、中袋同士の間を斜めに仕切るという考え方です。
こうすることで、中袋の結合部分に境がなくなり、滑らかなスロープを生み出せます。

※これによってできたのが、後にねるぐの原点となる“ピローモーフィアス”

ここからいよいよ斜め仕切りの機能を持つ枕の製造が始まりました。

親友の突然の死去

枕の生地や中袋のイメージは形状が整ったおかげもあり、それからはスムーズに進めることができました。
そして、完成もあとわずか!としていた矢先、何とも残念なことが起こったのです。
親友のSさんが試作品を見ることなくガンで急逝。
信じられませんでした。
S氏は最後まで枕の完成を待ち望んでいたために、非常に悔しかったに違いありません。

初めて手がけた枕“ピローモーフィアス”

こうやって出来た枕が、4つの斜め形状ユニットと斜めに仕切られた側地の構造です。
どんな睡眠姿勢も優しく支える枕”ピローモーフィアス”枕が完成しました。

この”モーフィアス”という言葉は、ギリシャ神話の『眠りと夢を司る神』の名前をとったものです。

ねるぐの写真

中材に関しては、当初提案を受けるつもりではありましたが、そんなこともあり、自分で探すしかない状況になってしまいました。

正直中材を探すことがこれほど難しいとは思ってもいませんでした。
『これならいけそう』
そう考えていたものもあったのですが、試作して本体に入れてみると、そのほとんどがイメージとは違っていたのです。

ただ、色々な中材を入れて試行錯誤している中で、1つの素材に可能性を感じました。
それがパイプ素材です。

この素材のもつ長所というのが、通気性に優れていること、丸洗いでき清潔に保てること、そして耐久性に優れていること。
以上の3点が、他の素材に比べると群を抜いていると感じました。

こうしてパイプを入れたユニット型枕”ピローモーフィアス”が完成したのです。

いろんな人に使ってもらうには

いざモーフィアス枕を販売してみると、かなり好評でした。
ハワイでも売ってもらえるようになり、国内のみにとどまらず多方面の方々から感想をいただけるようになりました。

しかし、1つネックに感じている部分がありました。

それは、当時の枕にかける一般的な金額からしたら、非常に価格の高い商品だったということです。
枕に使われている部材の量、質、作業工程の多さによる技術費により原価が跳ね上がってしまったことが原因です。

ちなみにピローモーフィアスの価格はタオルカバー付きで¥30,800(税込)です。

ユーザーが試しに手を出せる値段ではありませんが、現在でも機能枕の最高峰として絶大な人気を頂いております。
それでも『もっと多くの人に使ってもらいたい』という思いが常に心の中にありました。
そこで、ある問屋の担当者から、ピローモーフィアスの普及版の依頼が来ていたことも相まって、新モデルの開発を決めたのです。

新モデルはシンプルで使いやすく

新しく作る枕。作る側は単純性かつ利用者は利便性をと考えまくりました。
基本は、特許もとっている斜め仕切り構造を採用し、コストを削減するためにユニット型ではなく一体型にすることに。

思考を巡らせること数ヶ月、一体型の枕を立体化すると面白いかもしれないという考えが出てきました。
1枚の仕切りでピローモーフィアスのような船底型のように滑らかなスロープを表でできないか考えた結果、思いついたのがU型の仕切りです。

それにあたってユニット型と一体型では以下のような違いがあります。

ユニット型と一体型の違い

ユニット型枕(ピローモーフィアス)は仕切りを船底型のH形状にしています。一方、新モデルで考えた一体型枕は仕切をU型(馬蹄型)にしました。

当初はA(表)を表面に縫い付けていた このU字型の仕切りを一体型の枕の内側に天地で縫い付けることによって、
立体的な形を表現することが可能になるはずだと思ったのです。

しかし、U字型の仕切りを縫い付けるのは縫製工場でも頭を抱える程難しかったようです。
なんとか出来上がり、このU字型の仕切りを縫い付けた試作品が完成したので早速中材を入れてみました。

中材を入れてみたら期待していたような立体的な形にはならなかったのです。とてもじゃないけれど寝心地の悪そうな形の枕が出来上がりました。

ねるぐ試作品裏表写真
立体感がなく寝返りを打つスロープが確保できていない

たまたま裏返したことが完成のきっかけ

ねるぐ裏表写真

誰でも寝返りがしやすい枕の理想はしっかりありました。
しかしそれを形にすることは難しく、できた試作品は、寝返りをスムーズに促すためのラインが出ていなかったのです。
この時の落胆は今でもはっきり覚えています。

が、その次の瞬間でした。
たまたま裏返してみると、裏面は自然に引っ張り合う力が働き、思っていた以上にキレイなラインが出ていたのでした。

この感激は今でもはっきり覚えています。

寝返りをスムーズに促すラインをしっかりと作り出すことができたこの馬蹄型のパットは技術を確かなものにするために平成22年12月に日米特許を取得しました。

最も難航した中材の改良

こうした偶然もあり、枕の構造が着々と進んでいる中で、新モデルに合わせ中材も見つめ直すことにしました。

既存のパイプでは限界があったため、改良パイプを作り直す必要があったのです。
枕を一体化したことによりパイプをほどよく動かせる(流動性)ことが改良のポイントでした。

更に最大の欠点である耳障りな音とゴツゴツした感触はどうにかしなくてはならないとの考えから、この枕に合うパイプの改良を始めることになりました。

枕の形状・硬さの肌触りや清潔感は特に重要です。
『よく寝られそうだ!』という感触がとても大切です。

追求して理想にいくまでに2トンもの試作パイプが再生品に

ねるぐ中材の写真

私が考えていた理想のパイプというと、従来のデメリットをどう解消できるかという点でした。
パイプの原料の調整、また、割合で感触、流動性などが全く変わってくるのです。
これには幾度もの試作を繰り返し、その都度微調整する必要がありました。

振り返るとそれまでに約2トンもの試作パイプが再生品送りになっていました。
開発に失敗はつきものとはいいますが、なかなかな損出です。

2年もの施策を繰り返すうちにようやく現在のストロネパイプを誕生させることができました。
ストロネパイプは音が静かでソフトな感触が特長の中材です。
パイプとは思えないほどの手触りと静かさはねるぐユーザーの方にも好評です。

理想の枕の条件とは

仰向け寝での首部分と後頭部を支える高さ、横向き寝での体幹を守れる高さ、うつ伏せ寝では顔側面の当る角度など、を持っているかどうかをクリアする必要があり、中でも、首に負担がかからないことが重要です。

睡眠時は寝返りが必要で避けられません。ただし、身体が一定の姿勢でかなりの時間保持されるため寝姿勢が悪いと「寝違え」たり、首が痛い、肩がこるなどの症状になるのです。
逆に自分にあった枕を使用している人は寝返りの中で正しい寝姿勢を持続できることから整体と同じ機能を果たすことにもなるのです。

私の考える理想の条件は以下の6項目です。

理想の枕6つの条件

これらのことを踏まえ、誰でも自然に寝返りを打てるまくらの開発を続けてきました。
幾年もの年月をかけてようやく完成することができました。
今では販売累計60,000個以上もの人気商品となっています。

仰向け寝のためだけ計測して枕を選んだり、手触り、肌触りだけで枕を選ぶのは慎み、寝返りすることを前提に、仰向きから横向きへ、またはその逆の行為がスムーズにできる形状と、安定感が得られる硬さを想定して枕を選ぶようお奨めします。

コメントいただいた先生

写真:小林敏孝 教授

小林敏孝 教授
足利工業大学大学院、情報・生産工学専攻教授、元日本睡眠学会理事
日本における睡眠研究の第一人者。
1948年神奈川県生まれ。工学院大学大学院博士課程終了、工学博士(工学院大学)。東京都精神医学総合研究所を経て、1995年より足利工業大学教授。2003年より足利工業大学付属睡眠科学センター長。専門は人間の睡眠に関する研究。テレビ出演多数。

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