開発ストーリー

業界を震撼させた枕の出現

枕の写真

15、6年前、今ではほとんどの人に知られているA社の枕(北欧製)を始めて見た時、健康医療関連器具の開発に携わるものにとってかなりの衝撃であったことを覚えています。
何とも言いようのない感触もさることながら、押されたところがゆっくり戻る反発性(一般的に知られる低反発枕)は正に驚きでした。

さらに、これがNASA(アメリカ航空宇宙局)の開発商品であるというグレートなキャッチコピーだったから日本人にはたまらなく映ったことでしょう。
事実、スペースシャトル打ち上げ時、搭乗している人にかかる重力は半端なものではありません。

地球上では1Gだが打ち上げ時はたぶん5倍くらいの4~5G の重力が掛かり、その圧を分散できるクッション素材(体圧分散・衝撃吸収)として開発途中に生まれたのがこの低反発ウレタンであると言われています。
私もそうだが、日本人がアメリカなど外国から来たものに弱いのは相変わらずだが素材も斬新でした。それもNASAの開発ときたからなおさらです。

日本の枕業界も画期的な特殊枕を開発!

枕を選んでいる写真

時期は多少前後しますが、東京の寝具メーカーB社が枕の新しい機能を発表していました。
枕本体の内袋を分割し各々に高さを自由に変えられる枕です。
現在では、かなり普及していることもあり、オーダーメイドの枕としてはこれが主流になっています。この構造、なかなかの優れもので内袋をいくつかに分けて入れるところが特長になっているのです。
それまでこんな奇抜な考えはなかったし、正に画期的だったといえます。この商品、日本人には低反発枕より合うかもしれません。

そして、それまで寝具の付属品としか捉えられていなかった枕市場を、低反発枕の出現と、この新しい機能を持った枕が、それ以降大きく変えたといっても過言ではないでしょう。
それほど市場に大きく影響しました。

開発記憶メモ帳

メモ帳の写真

話は変わりますが、1993年2月から始めた「開発記憶メモ帳」も早や20数年経過しています。
振り返るとその当時の取り組みたい思いや方向性がひしひしと伝わってきます。
このメモ帳、いろいろなアイディアを詰め込んだ引き出しの役割を果たし創作を手伝ってくれるとても大切なノートです。それまで、枕なんて開発のテーマにも考えたこともなかったが、斬新な素材、そして新しい機能の出現を期に枕への関心が高まってきたことがこのメモ帳に残っていたのです。

考えてみれば、学生時代スキー部に所属していた頃の怪我で腰や首を痛めた後遺症は今でも多少残っていたことがきっかけで、枕への関心は以前からもっていました。
枕を作るというより現状のものを手直しやら作りかえやらしながらいろいろ試行錯誤したことを憶えています。
しかし、そのメモは途中で止っていました。
多分、これほど長い歴史を持つ枕を、分野からして専門外の私が新たに創り出すことなど不可能と感じたからに違いなかったのです。
それほど枕の開発は難しいと思っていました。単純そうだが頭や頚椎(首)部分を載せ、そして複雑な動きに馴染む何かを持たせなければならないところが、開発に入り込む余地がないと思い込んでいたからに違いなかったのです。
人間の骨格(身体形状)や筋肉の違い、そして使う人の精神的なところなどが影響し、一晩でその日の体調に影響を与えると言われているほど難しさをもっていることがその理由なのでしょう。
しかし、その中で自分の使っているものを含め、枕自体に疑問を持ち続けていたことは確かにありました。

後で判ったことだが当時の寝具業界は、上述したA社(北欧製の枕)、B社(東京の寝具メーカー)以外の殆どのメーカーは枕の重要性について全くと言っていいほど研究していなかったばかりか関心さえもなかったようです。これには驚きでした。

親友からの示唆

それから、数年経った2003年春、枕の開発なんて全く忘れていた頃です。
足の健康関連の共同研究開発で常に情報交換を続けていた大親友のS氏からこんなことを頼まれました。
『ねぇ、枕の開発をしてくれない! いい枕を創ろうよ! 一緒に!』

私の答えは決まっていました。

『できないよ! 難しいから・・・。多くの寝具や枕の専門メーカーが何十年も良い枕作りに凌ぎを削っているんだ。いくら健康関連の開発を手がけていても寝具に関しては新参者が参入する余地などありゃしないよ。』

でも、彼は引き下がらなかった。

『中身素材は自分にいいアイディアがあるから枕本体について考えてくれ。今売られている枕を見ても、これというものはないし何とかしてほしいから。頼むよ。』 彼は大手靴下メーカーの社長です。繊維関連はお手のものである彼がこれほどまでに言うには何か理由があるのだろうとその話を受けることにしました。 内心かなり複雑だったのだが、こうして枕の開発が始まったのでした。

友人から頼まれて始まった枕の開発。朝まで快眠できる枕が完成したきっかけは屋根でした。

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